SPECIAL
スペシャル
vol.1:「長生きしたからこそ、出てくる病気」って?
テーマ:「甲状腺機能亢進症」
さて、今回より日本動物病院協会(JAHA)様とのコラボで猫にまつわるコラムを書かせていただくことになりました、アニメ監督・獣医師の芦名みのるです。 日本全国に会員動物病院を多く持つ日本動物病院協会様とのコラボだからこそ、病気についてのお話をしようかなと思うのですが、まあこのご時世、「猫 病気名」でググれば情報はいっぱい出てくるわけでして、ちょっと切り口の違うお話をしていこうと思います。皆さん、今、猫さんは何歳くらいまで生きるか知っていますか?
30~40年程前は10年生きたら「やるじゃん」って時代でしたが、今では、15歳超えはもちろん、20歳を超える猫さんもいるくらい寿命は伸びています。(※1)
それはひとえに、日本の獣医療の発展と飼い主さんの意識の向上のたまものです。
ですが、長生きするようになった結果、昔はそれほどピンと来なかった病気がクローズアップされてきていることをご存じでしょうか?
いわゆる「長生きしたからこそ、出てくる病気」ってやつですね。
今日はそういう病気の一つを紹介したいと思います。
高齢の猫ちゃんがご飯を食べているのに痩せてくる『甲状腺機能亢進症』
高齢の猫ちゃんが変に活発だったり、落ち着きがなかったり、場合によっては噛んできたり鳴きまくったりとかしてませんか?ご飯食べているのに痩せてきたり、目がギラギラしたりしていませんか?
それって「甲状腺機能亢進症」かもしれません。
甲状腺とは、血液の流れに乗って心臓や肝臓、腎臓、脳など体のいろいろな臓器に運ばれて、身体の新陳代謝を盛んにするホルモンを分泌するところで、首のあたりにあります。
猫ちゃんは年齢を重ねるごとに、このホルモンを出す機能が強くでる傾向があります。
症状としては、「体重減少」「多食」「嘔吐」「多飲多尿」「活動亢進」などがあります。
ちなみに甲状腺が腫大している場合もありますが、必ずしも大きくなるわけではありません。
要するに、
「なんかめっちゃ元気でご飯とか水とかめっちゃ食べたり飲んだりしてるけど痩せてる」
という状況が発生するのです。
飼い主さんからしたら「元気ね」と思っちゃいますし、多少、鳴き声がうるさかったり噛んだりしても「年だからボケてきたのかな?」と受け入れちゃうケースが多いです。
でも考えてください。
食べて飲んでるのに痩せていくって変じゃないですか?
これが「甲状腺機能亢進症」なんです
甲状腺機能亢進症は猫の長寿の邪魔をする
代謝が進んでいるから食べても食べても痩せちゃう。代謝が進んで変なスイッチが入っちゃってそれが様々な行動に出ちゃう。
代謝が進むからいろんな病気が出ます。
嘔吐や下痢になったりする仔もいる。
腎臓や呼吸にも負担が出る。
心臓病のリスクも跳ね上がる。
要するに、「寿命が縮まる可能性が高い状態である」ということです。
猫ちゃん自身も心身ともにつらい状態だったりするので、治療をぜひ行ってあげてください。
甲状腺機能亢進症は診断・治療が可能な病気
甲状腺機能亢進症ですが、動物病院で治療が可能です。動物病院では触診や血液検査や超音波検査などで診断を行います。
甲状腺機能亢進症と診断されると治療が行われます。
治療法は甲状腺を外科的に切除する以外に、甲状腺の分泌を抑制するお薬を使ってコントロールすることも可能です。
治療方針については、かかりつけの先生に相談してみましょう。
年齢とともに起きる症状や病気は確実に存在します。
そんな中には、原因を突き止めれば対処できるものもたくさんあります。
健やかな愛猫ライフを過ごすために、気になることはかかりつけの動物病院でしっかりと相談してください。
なんとなく「年だから」という言葉でなんとなく自分を納得させちゃダメですよ。
※1
「日本ペットフード協会による令和3年度全国犬猫飼育実態調査」
https://petfood.or.jp/topics/img/211223.pdf
「家庭動物(犬猫)の高齢化対策」
http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06401/a6.pdf
監修:吉内龍策(獣医師・日本動物病院協会)
執筆:芦名みのる(獣医師・アニメーション監督)