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vol.5:「歯が痛い!!」←深刻じゃない?

テーマ「慢性歯肉口内炎」

ごはんおいしいですよね。
なんかね……箸が止まらないんですよ……。
ダイエットしなきゃと思っていても、気がついたら食べちゃう。

でも、口が痛くてご飯が食べられなくなったら……?

嫌です!
マジで嫌です!!

今日はそんな病気のお話です。


ねこちゃんの口内炎は人とは違う!!


ねこちゃんの病気で口内炎ってよく聞くと思います。
口内炎といえば我々も馴染みがあって、「口の中を噛んでしまった」とか「ビタミンが足りない」とか、しばらく食べにくいけどなんとなく治るというイメージがあると思います。

人間の口内炎といえばアフタ性口内炎と言われるものが代表的で、熱いものが染みて痛いものの、1~2週間すれば自然に治ってくれます。
でも、猫のいわゆる慢性歯肉口内炎と呼ばれる病気はまさに命にかかわる病気で、痛さも人間の口内炎の比ではないです。
ドライフードをカリッとかんだら「ギャッ!」と叫んで飛び上がるほどです。
我々はそこまで痛いってことないですよね?
ご飯が食べられないレベルの痛みなんです。
当然、食欲が落ちてしまい、衰弱してしまいます。

口の病気と侮ることなかれ。
ねこちゃんにとっては本当に深刻なんです。


どんな症状?原因は?


ねこちゃんの慢性歯肉口内炎は様々な症状を呈します。
口臭がひどくなったり、口がふさがらなかったり、場合によっては汚いウミのようなヨダレが出たり、奥歯の後ろの粘膜がはれ上がってザクロのようになるなど、歯の歯茎のあたるところが溶けてしまったりもします。

原因については、カリシウイルスの関与や猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)のアシスト、免疫の暴走などによるものなど、様々な要因が言われていますが、まだまだ十分に解明されていないというのが現状です。
ただ、やはり多頭飼育が発生率を上昇させているというデータは存在します。
ちなみに歯石による歯周病は、直接原因ではなくこれらの病気を悪化させる要因と考えられています。

<慢性歯肉口内炎の症状>
・口臭
・よだれ
・ご飯を食べにくそうにする
・歯ぐきなどが赤くなる
・歯ぐきなどから出血する
など


慢性歯肉口内炎って治療ができる病気?


慢性歯肉口内炎になってしまったねこちゃんは、原因がどうこうというより、どうケアしていくかが大事になってきます。

治療は緩和療法が中心となります、治療法も抜歯を含んだ外科的なものから、内服やレーザー治療など状況に応じて様々なものがあります。
ここは動物病院さんによって変わってくるところなので、相談すると良いでしょう。
ただ、やはりどれも困難な治療だということは知っておいてください。

<慢性歯肉口内炎の治療>
・口腔内清浄化
・抗炎症薬
・免疫抑制治療(ステロイドや免疫抑制剤など)
・鎮痛治療(内服薬や注射、ソフトレーザーなど)
・インターフェロン治療
・炭酸ガスレーザーによる治療
・放射線治療
・前臼歯抜歯、全顎抜歯など


食べたくても食べられないつらい病気だからこそ早めに向き合おう


命に関わるレベルだからこそ、前もって向き合ってあげる。
なってしまったらケアしていく。
これがねこちゃんの慢性歯肉口内炎との基本的な付き合い方です。

激しい痛みを放置すると痛みそのものが慢性化してしまい、その後に様々な治療を施し口の状態が大きく改善しても、痛みだけが一生継続するという地獄の展開です。

口臭やヨダレがひどければ、まずウイルスチェックをしてもらいましょう。
この病気は先手必勝、早い時期からの治療が大切なのです。
かかりつけの動物病院で定期的な健康診断をしてもらってください。


監修:吉内龍策(獣医師・日本動物病院協会)
執筆:芦名みのる(獣医師・アニメーション監督)
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