SPECIAL
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vol.3:猫の長生きの永遠のテーマ……腎臓!!
テーマ「慢性腎臓病」
さて、今日は慢性腎臓病です。「猫ちゃんの病気といえば?」と尋ねると必ず出てくる病気ですね。
まずは腎臓って何をする臓器?というところからいってみましょう。
腎臓は簡単に言うとおしっこを作る臓器です。
おしっこはいらないものを出しているんですね。
血液の中にあるいらないもの。老廃物というのですが、それを腎臓でキャッチして膀胱に送り込む仕事です。
その老廃物をキャッチしている毛細血管(細い血管)のかたまりを糸球体というのですが、猫ちゃんはそれがワンちゃんに比べて少ないんです。
だから、ワンちゃんと比べて腎臓の病気になる率が高いんです。
腎臓の機能が落ちると、どうなるか?
考えてください。
腎臓はどんな臓器でした?
「いらないものをキャッチして捨ててくれる」臓器です。
その機能が落ちているということは?
血中、ようするに身体の中の毒が抜けないということになります。
身体の中に毒がまわってしまう
当然、気持ちが悪くなってしまう
気持ちが悪いから食欲がない
「あ、二日酔いみたいな感じ?」
うーん、厳密には違うんですが、意外とそういうイメージでいいです(笑)。
それが慢性化、ずっとその状態なんだから、そりゃ痩せていきますよね。
ちなみに口臭も臭くなります。
血液中に毒が回ってますからね。
「猫ちゃんの口が臭いのは普通だ」とか言ってちゃだめですよ。
臭いは病気のヒントですからね。
慢性腎臓病は長生きの証?
じゃあ、何故そのような病気になるのか?これは人間も同じなのですが、猫ちゃんが長生きするようになったからです。
獣医療の進歩、そして飼い主さん達の意識の上昇によって、40年近く昔から考えると、とても長生きできるようになりました。
電化製品だって、長く使ってるとガタがきますよね?
生き物もやっぱり年齢とともに、いろんな臓器がガタがきます。
だからこそ、出てくる病気という認識をまずは持ってください。
当然、人間と同じく腎臓病にならない努力は大事です。
塩分などを控えた食餌は当然のこと(人間の食べ物は塩分多いよ!)、日頃の定期的な検査なども行っていくことが大事です。
慢性腎臓病は目に見えたときには、かなり悪くなっています。
腎臓の糸球体は『再生されません』。
そう、一度悪くなった腎臓は戻ってこないのです。
だから、日頃からの検査に意味が出てきます。
血液検査や尿検査、超音波検査などが多く行われます。
慢性腎臓病の治療法
人間の慢性腎臓病は人工透析が主流になっています。これは血液を一度抜いて、毒素を取り出して戻すというものです。
ちなみに凄いお金がかかりますが、医療保険のお陰で我々は活用ができています。
ただ、猫ちゃんの慢性腎臓病は人とはちょっと毛色が違うこともあり、人工透析が複雑になります、当然医療費もとてもかかるので、一部動物病院では行われていますが、まだまだ現実的でない治療と言わざるを得ません。
なので、最も行われる治療は「点滴治療」となります。
要するに、
「腎臓が思ったように毒を捨ててくれへんから、身体の中の水の量を増やして、たくさんおしっこさせて、毒を出させよう」
ということですね。
要するに、
「仕事出来ないやつに、残業させよう」
ということですね。
あれ?わかりにくくなりました?
ニュアンスを感じてください。
深刻な場合は血管から点滴(血管点滴)を行いますし、通院などで行える方法として皮膚の下から行う点滴(皮下点滴)もあります。
他には、毒素を吸着するようなサプリメントや腎臓を保護するお薬もありますし、当然、食餌の管理や水分補給など自らできることもあります。
気になる方は一度、かかりつけの先生と相談してください。
おうちで気付ける!? 慢性腎臓病
細かい検査や診断はやはり動物病院に行くしか無いのですが、日頃からの観察で早期に病気に気付けるケースもあります。すべてがそうではありませんが、いわゆる「ベタ」な症状を以下にあげておきます。
ただ、猫ちゃんは不調を隠す生き物ですよね。
だから、「これはマジで動物病院いったほうがよくない?」と思える要素を太字で書いておきます。
「毎日水をがぶ飲みしてるのに、背中の皮膚を引っ張って戻らなければ病院にいけ!!」
これです。
背中の皮(他にも引っ張れるところがあればいいですが)を、引っ張ると普通は戻りますが、脱水していると皮膚が戻りません(テントテスト)。
水を沢山飲んでいるのに、水がどんどん出ちゃっているので皮膚の潤いが落ちる。
これはおうちでも出来ることですから是非やってみてください。
え? わからない?
それはアレですよ。
かかりつけの先生に相談ですよ。
<猫の慢性腎臓病の症状>
※ステージ(病気の進行の程度)によって、様々な症状が出ます・食欲の低下
・体重減少
・嘔吐
・体温の低下
<猫の慢性腎臓病の特徴>
・水をよく飲むようになる・口が臭い(内臓からくるような臭さ)
監修:吉内龍策(獣医師・日本動物病院協会)
執筆:芦名みのる(獣医師・アニメーション監督)